2001/08/13
語源の話5
昨日の続きです。
語源というよりは出典になるかも知れませんが、ことわざや慣用句もまた調べると面白いものです。例えば「豚に真珠」ということわざがあります。同じような意味のことわざとして「猫に小判」ということわざや、「馬の耳に念仏」という言葉もあります。これらの言葉はみな「大事なものを与えても価値がわからない」という意味で使われる言葉で、「馬耳東風」とは微妙に異なります。さて、この中で「猫に小判」は国産ですが、「馬の耳に念仏」はどうも中国原産のようです。そして肝心の「豚に真珠」に至ってはローマが起源という説があります。新約聖書のマタイの福音書の7-6節を日本語訳したものを書きます。「聖なるものを犬に与えてはいけません。また豚の前に、真珠を投げてはなりません。それを足で踏みにじり、向き直ってあなたがたを引き裂くでしょうから」。まさしく「豚に真珠」です。「蛇の道は蛇」ということわざも非常に興味深いものです。「じゃ」も「へび」も同じものではないですか。ではこのことわざは「かえるの子はかえる」と同じようなものなのでしょうか。違います。日本では実は「じゃ」と「へび」はもともと区別されていたのです。「じゃ」は巨大な蛇のことを表し、主に架空の蛇を指していました。例えばヤマタノオロチは「じゃ」ですし、ウワバミも「じゃ」です。対して「へび」は通常のへびを表し、アオダイショウのような蛇は「へび」だったのです。よって「蛇の道は蛇」ということわざの意味は大蛇の通り道は小さな蛇が知っているという意味になります。余談ですが、「蛇口」の語源も面白いです。明治三十一年の東京上水道整備工事の際に水道料金が上昇したため、共同で水道を使うことが多々ありました。そのときに使った蛇口が龍の口から水が出るデザインだったため、始めは「龍口」と呼んでいたのですが「龍口」ではあまりに恐れ多いということで多少格の低い「蛇口」になったのです。だから「へびくち」ではなく「じゃぐち」なのです。
明日に続きます。
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