2002/03/23

徴兵制の話1
さて、昨日は徴兵制という方策が世界情勢から大きく後退する方策だと述べました。これには根拠があります。
現在、イギリス、アメリカ、ロシアの三国の中で徴兵制を引いている国は幾つあるでしょうか。答え。一つもありません。意外かも知れませんが、イギリスは徴兵制そのものが怪しいのですが、一応1960年代には消滅していましたし、アメリカは1973年に、ロシアも2001年に徴兵制を廃止しました。ちなみにオーストラリアは1971年に、フランスも2001年に徴兵制を廃止しています。徴兵制の廃止は歴史的な流れなのです(例外的にドイツは徴兵制をひいているが、事実上、制度として成り立っていない)。何故このような現象が起こったのでしょうか。理由はそれほど複雑ではありません。単純に徴兵制のもたらすコストと効果が割の合わないものになったからです。つまりコストパフォーマンス論ですね。最近の軍隊のコストは急激に上昇しており、先進国の場合は特に近代化された、いわゆるハイテク軍隊を保有するようになりました。ハイテク化された軍隊は、その単価コストが極めて高く、また、ハイテク化された兵器を適切に取り扱うためには極めて熟練した技術が必要となってしまったのです。そのため、徴兵制で数年程度学んだだけの弱兵では、戦時に有効な兵隊には育たないのです。早い話が人海戦術の時代は終わりを告げたということです(実際、あの中国ですらダマンスキー島事件以降は人海戦術では勝てないことを悟って近代化を進めている)。また、実際に兵隊として役に立たない程度の技能しか得られない徴兵制では経済的損失も多大です。徴兵制は労働力の要となる年代の若者を強制的に確保することになるからです。そういう流れから徴兵制に関する疑問が噴出し、先進国は軒並み徴兵制度を取りやめ、職業軍人制度に切り替わっていったのです。
さて、では日本に徴兵制をひいた場合、どのような問題が発生するのでしょうか。明日はその点について考察してみたいと思います。


 

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