2001/07/29
重さの話
例えば1トンの鉄と1トンの綿、どちらが重い?という質問に対して、子供はつい1トンの鉄、と答えてしまうことがあります。もちろん、この答えは間違っているのですが、正確なところ、実際にはどちらが重いのでしょうか。
その前に、なぜヘリウムを入れた風船は空に浮くのか、というのを考えてみましょう。ヘリウムを入れた風船は空気より軽いから。この答えは間違っています。そもそも重い、軽いを言うのなら空気はとても重い物質です。空気の重さはだいたいリッターあたり1.2g重もあります。大気の総量を考えるとその重さは何トンあるのか想像もつきません。ここで重要なのは空気の重さではなく、空気の密度なのです。空気の密度、つまり単位体積あたりの重さよりも風船内の密度が小さくなると、風船は浮くことができます。では、なぜ物体は密度が空気よりも小さいと浮くことができるのでしょうか。それは浮力の原理で説明できます。浮力とは流体(気体や液体)中の物体が重力とは反対方向に受ける力で、この力は物体によって押しのけられた流体の重さに等しくなります。水で説明すれば、物体を水の中に入れると水中の物体の体積に水の密度をかけた力が働くということです。この法則は流体中の物質に働きますから、もちろん空気中でも働きます。1リットルの体積を持つ風船が空気中にある場合、重力が1Gであるなら受ける力は1.2g重です。よって1リットルの風船の重さが1.2g重以下であるならこの風船は空気の浮力の影響で浮くことができます。さて、最初の問題に戻りましょう。例えば1気圧の環境で無風状態、同じ重力で同じ1トンの重さであった場合、この鉄と綿を気圧の低い場所に置いたらどうなるでしょうか。重力は実は高さによって微妙に変化しますから本当は綿と鉄の高さが同じでないと受ける重力は異なるのですが、とりあえずほとんど関係がないので考慮しないことにします。今まで受けていた浮力は密度が小さい綿のほうが大きかったわけですから、この場合、綿のほうが重くなるのです。
「同じだよ」というのは高校を出る前までにしましょう。


 

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